二度の骨髄提供は、「お互いさま」の精神で
2019年8月22日
迷いなく軽やかに人のために行動する姿は、骨髄バンクドナー登録の垣根を下げ、助けが必要な人がいる現実を身近に感じるきっかけを与えてくれます。骨髄採取のため入院中の病室を訪ね、名も知らない誰かのために行動し続ける胸の内をうかがうと共に、骨髄採取の様子をレポートします。
助けが必要な命に貢献したくて決めた骨髄ドナー登録

患者さんと自分の白血球の型(HLA)が一致したことを知らせる適合通知が届いたのは、登録から半年後。この時点ではまだドナー候補ですが、念願が叶うと思ったらなんだか嬉しくて。ドナー決定までにはプロセスを踏む必要があり、これをコーディネートと言います。まず、病院で骨髄バンクのコーディネーターさんから骨髄提供の流れや考えられるリスクについて説明を受けた後、調整医師が採血や問診を行う確認検査を受けました。しばらくすると骨髄バンクから通知が届き、残念ながらこの時はドナーに選ばれずコーディネートは終了。書類には、「患者さんの都合」と書いてあり、選ばれなかった詳しい理由はわかりません。もっと適合率の高いドナーがいたり、患者さんの病状変化だったりすることが多いようです。
ドナー決定、人の命を担う役割に身が引き締まる思い
確認検査や健康診断は会社に半休を取り、骨髄採取のための3泊4日の入院は有給休暇を使いました。務め先の会社にドナー休暇制度はありませんが、フレックス制なので休みを調整しやすく助かっています。社内でドナー提供者はいませんが、みんなが理解を示し快く送り出してくれました。
リラックスして臨んだ二度目の骨髄提供の様子をレポート!
採取当日の流れ

1. 午前9時前。手術着に着替え、両親に見送られてストレッチャーで手術室へ移動。

2. 骨髄採取は全身麻酔で行います。前回はマスクで麻酔薬を吸入しましたが、今回は手の甲から点滴で麻酔薬を入れる静脈麻酔を行いました。今回は、注射直後にちょっとピリピリしました。

3. 正午過ぎ。無事に骨髄液1,000cc採取し病室へ。
意識は半覚醒でしたが、看護師さんとの受け答えはできました。

4. 脚には血栓防止装置を装着。尿カテーテルを抜いた後の排尿痛が心配でしたが、尿カテーテルは使用せず、T字帯の中に尿取りパッドを入れて対処。気管チューブを抜いた後は少し喉が痛みました。

5. 腸骨に骨髄刺針を刺して骨髄液を採取します。
前回は5ヵ所でしたが、今回は3ヵ所に刺しました。

6. 午後には看護師さんに見守られて病室内で歩行を確認。問題なかったので病室のあるフロアの歩行を許可されました。翌日はベッドの上でパソコンを開き、仕事もぼちぼち再開。

7. 体調は良好、痛み止め不要、食欲あり!採取日の夕食、かじきの竜田揚げをおいしく完食。
骨髄提供を終えて
患者さんの元気な姿がドナーのモチベーション

ドナーに対して「申し訳ない」という言葉を同種移植体験者から聞くことがあります。会社を休み、体に負担をかけて骨髄を提供してもらうことへの申し訳なさだと思いますが、どうかそんなふうに思わないで。病気になったのは患者さんが悪いのではなく、僕だっていつ大病をするかわからない。だから「やってあげている」という意識はなく、「困ったときはお互いさま」の精神です。立場は対等だし、患者さんは大切な仲間。闘病を経てボランティア活動をしている方々は、治療に長い時間を費やし、なおかつ退院後も自分の時間を同病の患者さんや社会のために使っています。僕の方こそ頭が下がる思いですよ。
ドナー登録への関心を高め登録者を増やすためには何が有効なのか、いつも模索しています。確実に必要なのは、移植治療が必要な病気に関心を持ち、その病気と闘う患者さんに心を寄せ、病気を身近に感じる機会を作ること。他人事が自分事になったとき、人は行動に移せると思うので、そのきっかけを作っていきたい。勤務先では、僕のドナー体験と同僚女性の白血病罹患を機に、会社で献血併行型ドナー登録会が実現しました。人を動かすのは、やっぱり人ですね。
取材・執筆/北林あい、撮影/小北一兵