震えながら願った完全寛解から完治へ。
今は、私が元気に生きている意味を探す旅の途中

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 リンパ腫

2026年1月21日

がんが完治したのは診断から8年目。ようやく落ち着いて病との日々を振り返れるようになったと語るのは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に罹患した中村明美さん。不安を引きずらないためのセルフコントロール術、そして日常を取り戻した心に宿る思いとは。貴重な経験談と心の機微を語っていただきました。

お話を伺った方:中村明美さん・55歳(罹患時47歳)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

良性と聞いていた腫瘍が悪性とわかり、頭が真っ白に

呼吸をすると左右の肺の間がチクンとして、だるさもあり一日だけ仕事を休みましたがよくならず、かかりつけの内科のクリニックを受診し胸部レントゲンを撮りました。そうしたら左右の肺の間に腫瘍が見つかり、今度は市民病院の呼吸器内科に行くと、腫瘍の形がきれいなのでおそらく良性だろうと言われたんです。良性でも体のなかに腫瘍があるのは心配なので手術を希望し、入院して胸腔鏡手術を行いました。

退院してしばらく療養したら仕事に復帰できると思っていましたが、生検の結果、「悪性でした。血液がんです」と言われ、ショックで頭が真っ白に。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫という病名は聞いたことがなく、「この病気は髪の毛が抜ける治療をしますか」と質問すると返ってきた答えは「そうです」でした。その日は病院からどうやって帰ったのか覚えていなくて、そのくらい動揺していたのだと思います。

血液内科で検査をして標準治療の説明を聞くうちに道筋が見え、「治る病気なので頑張りましょう」という主治医の一言で気持ちが安定しました。この病気について自分で調べようとは思わなかったです。理由はインターネットの情報は玉石混交で、何かを検索するとエビデンスが不確かな情報まで紐づいてきて不安になると思ったから。だから情報は自分で取りに行かず、わからないことは主治医に聞くと決めていました。

髪が抜けた普段と違う自分を受け入れ、楽しんでみた

抗がん剤をすると立ち上がれないくらいの吐き気に襲われる。そんなイメージがありましたが、「いい吐き気止めがあるから大丈夫ですよ」という主治医の言葉を信頼し、実際に吐き気に悩むことはなかったです。

ですが口の中に蝋を塗られたような違和感を覚え、味覚障害を発症。味噌汁の塩分濃度がわからなくなり、茹で野菜や白米など味がはっきりしないものを食べると気分が悪くなりました。主治医に相談したらカップ麺をすすめてもらい、食べてみたらおいしくて感激!ハンバーガーやお好み焼きもおいしいと感じられ、体力が落ちないように食べられるものを探して食べていました。

髪の毛は1クール目でポロポロと抜け始め、枕についた抜け毛を見たときはこれがドラマでよく見る光景だと思ったものです。退院して家に帰り3、4週間経つと、頭にシャワーをあてるだけでどんどん抜けていきました。事前に話を聞いていたから深く落ち込むことはなく、休職し外出の機会が少なかったので高額なウィッグは購入せず、家では何も被らず外ではつば付きの帽子を愛用していました。もともと髪の量が多いので髪がなくなった生活を経験してみたいとか、全部抜けたあとは頭もボディソープで洗えて楽だなとか、脱毛期間を割と楽しめた感じです。

日記に気持ちを綴ると、不安を引きずらなくなり心が楽に

幸いだったと思うのは主治医に恵まれたことでしょうか。入院中に複数の看護師さんから「患者さんだけでなく、看護師にも裏表がなく優しい先生なんですよ」と聞き、この先生なら信頼できると思いました。実際、診察中は私のほうを向いて話してくれるし、質問すると時間をかけて丁寧に説明してくれる先生でありがたかったです。

そういえば主治医のすすめで日記をつけ始め、今も続けています。自分の体調を10段階で記録し、便秘のときは排便の回数も書き留め、体のリズムを把握するのに役立ちました。再発したらどうしよう、仕事は復帰できるだろうかという不安も日記に書くようにしています。書くと気持ちが紙に移るような気がして、不安を横に置いておけるので心のセルフケアになっています。

緊張が安堵に変わった、完全寛解を迎えた日

化学療法中に肝障害が起きて肝臓の数値が上昇し、治療の中断が検討されました。どうなるか不安でしたが減薬して対処することに。減薬が直接、再発リスクに関わることはないと言う主治医の見解を信じて従いました。

そんなこともありながら化学療法が終わり、治療後の検査結果を聞きに病院へ。診察室の前で順番を待っている間、転移があったらどうしようと思うと足の震えが止まらなかったです。「異常は見られません。完全寛解です」と言われたときは、緊張が解けて膝から崩れ落ちそうになりました。寛解の7年後には完治を迎えましたが、年に一度の検査の日は緊張がよみがえります。ほかにも朝起きて体に痛みがあったり、動悸がしたりするたびに不安がよぎり、自然に痛みが消えると不安も消える。その繰り返しですが、日記を書くようになってからはあまり引きずらなくなりました。

今になってようやく自分の病気と治療について受け止めて、振り返れるようになりました。病気になってよかったと主治医に言ったらびっくりされたけど、病気にならないと知り合えなかった人や新しい世界が見えたからよかったと思えたんです。最近は私が元気に生きている意味を探したいとか、この命を自分だけのものにしてはいけないという思いに駆られています。がん患者さんを支援するピアサポーターの勉強を始めたので、人の役に立つことで探している答えが見つかるかもしれません。まだ勉強中の身ですが嬉しかったのは、患者さんに「また来ますね」と言ってもらえたこと。私のほうが元気をもらいもっと頑張ろうと思いました。

取材/文 北林あい